最近、著名人のなかでも、ご自身が乳がんを患っていることを公表する方が増えていますが、決して少なくない数の人がこの病気にかかっています。
乳がんにかかる女性は年々増えており、日本人女性の12人に1人が乳がんを発症しています。
2013年には、乳がんで亡くなる女性が1万3000人を超え、35年前の3倍以上になっています。
乳がんは、女性である以上、決して他人ごとではない病気なのです。
ある日、何気なく乳房に触ってしこりに気がつくかもしれません。
また、最近の医学では、インフォームド・コンセント(正しい情報を伝えた/得た上での合意)という考えに基づき、基本的に本人に病名を告知するようになっています。
もしがんになったとしたら、治療をするにも手術をするにも本人の同意が得られなければ治療が行えないのです。
つまり現代においては、がんであることを知らずにがんと戦うことはできません。
敵に勝つには、まず敵を知ること。まず乳がんを知ることが大切です。乳がんには色々な種類がありますので、ポイントを押さえておきましょう。
乳がんとは?
「乳がん」は乳腺にできる悪性腫瘍の総称です。
乳腺は、母乳を作るための「小葉」と、母乳の通り道である「乳管」でできています。
発生・進行ともに、女性ホルモン(エストロゲン)が関与していることが多いのも乳がんの特徴です。
初潮が早い、閉経が遅い、初産年齢が遅い、高齢で未産など、エストロゲンにさらされる期間が長いほど乳がんにかかりやすくなります。
また、閉経後は脂肪組織でエストロゲンがつくられるため、閉経後の肥満も乳がんのリスクとなります。
女性の社会進出などのライフスタイルや食生活の欧米化も大きく影響していると考えられます。
乳管がん と 小葉がん
乳管がん
乳がんの多くは乳管の細胞(乳管上皮細胞)が、がん化して発生します。
がん化した乳管上皮細胞は、最初、乳管内にとどまっています(この状態を、乳管内がん、または非浸潤性乳管がんと呼びます)。
発見される乳がんの約1割がこのタイプで、多くの場合、病巣の大きさにかかわらず、手術によって切除すれば、ほぼ100%治すことができます。
しかし、病態が進むと、乳管の壁(基底膜)を破って周囲の組織に広がり、リンパ管や血管の中に入り込むと他の転移への危険性が出てきます(この状態を浸潤性乳管がんと呼びます)。
つまり、がん細胞が乳管の内部だけにとどまっていれば、転移の可能性はほとんどないと考えられるのです。
小葉がん
小葉にがんができた場合、触診でははっきりと分からないことが多いと言われています。
また、画像診断でもがんの広がりを見極めることが難しいことが多く、乳房全切除に至るケースが多い乳がんです。
ただし、比較的早期であれば、乳房を温存して治療することも可能です。
早期に再発するケース、晩期再発として腹膜転移が見られるケースなどがあり、長期にわたる観察が必要ながんです。
乳がんのなかでは約5~10%といわれています。
非浸潤がん と 浸潤がん
非浸潤がん
がん細胞が乳管や小葉の内部にとどまっているものを「非浸潤がん」といいます。
非浸潤がんは、乳がん全体の5~10%を占めています。乳頭から血性の分泌物や、マンモグラフィ検査での微細石灰化の所見で発見されることが多いです。
このタイプは、リンパ節転移や遠隔転移を起こすことはなく、病巣を完全に切除すれば完治できます。
浸潤がん
がん細胞が乳管や小葉の内部にとどまらず、これらを包んでいる膜(基底膜)を破って外へ出たものを「浸潤がん」といいます。
浸潤がんになると、がん細胞が乳房内の静脈やリンパ管に入り、乳房以外の臓器に運ばれて、そこで新しい病巣をつくります。これが「転移」です。
乳がんは、一般的に「早期発見であれば、乳房を残すことができる可能性が高い」というイメージがありますね。
でも実は、乳房を温存できるか全切除するかは、がんの病変の広がりや存在範囲によって決まります。
そのため、早期発見したからといって、必ずしも温存可能とは限らないのです。
非浸潤がん(=ステージ0の早期乳がん)であっても、広がっている範囲が広ければ乳房を全て切除せざるを得ない場合もあります。
浸潤性乳管がん
浸潤性乳管がんは、次の3つの型に分類されます。
- 乳頭腺管がん
- 充実腺管がん
- 硬がん
乳頭腺管がん
浸潤性乳管がんでは最も予後の良いタイプといわれています。乳がんの約20%がこのタイプのがんです。
乳頭腺管がんはキノコ状(乳頭状)に発育するためこのように呼ばれます。
充実腺管がん
乳がんの約20%を占める種類のがんです。
小さな腺管の中身を押し広げるように増殖し、シコリを形成します。マンモグラフィやエコーでも比較的境界が明瞭なシコリとして認められることが多いです。
硬がん
乳がんの約40%を占めるがんです。
マンモグラフィでは境界が毛羽立っているようなシコリ(この毛羽立ちの所見をスピキュラと呼びます)として見られることも多いです。
しかし、触診ではシコリとしてはっきり触れない場合もあり、自己発見しにくいタイプです。
特殊型
上記でご紹介した3種類を「標準型」とすると、それらとは異なる種類のがんを「特殊型」と呼んでいます。
たとえば、粘液を多量に含む粘液がんや炎症性乳がんなどが、この「特殊型」に含まれます。