乳がん対策として最も重要なのは、「早期検査」「早期発見」「早期治療」です。
しかし、残念なことに日本の6割以上の女性は、乳がん検診を受診していません。日本での乳がん検診受診率は4割未満です。
他の先進国の受診率は8割を超えており、乳がん患者数が増えているにもかかわらず乳がん死亡率も年々下がってきていますが、日本では乳がん死亡率がまだ上昇しているのが現状です。
「早期検査」「早期発見」「早期治療」のためには、きちんと乳がん検診を受け、検査で引っかかったり、自身で異変を感じたときは、すぐに病院を受診すること。さらに、がんが進行してしまう前に適切な治療を受けることが重要になってくるのです。
だからこそ女性には、ぜひ乳がん検診を受けていただきたいのですが、時間的な問題や、費用、精神的な部分でなかなか検診に行きづらい面もあるでしょう。
また、いざ検診に行っても、その後の手術や治療に関する情報が不足しており、不安を持っている女性も少なくないと思います。
そこで今回は、まず「うまく乳がん検診に行く方法」と、「うまく病院に通う方法」の2点をご紹介します。
うまく乳がん検診を受ける方法とは?
女性の多くが乳がん検診に行きづらい理由のひとつに、時間的な問題があるかと思います。
仕事が忙しい、家事や子育てが忙しい……その一方で、病院に行くといつも混んでいるというイメージを持っている女性も多いでしょう。
いざ検査を受けようと思っても、乳腺科が混んでいるとどうしたらいいのでしょうか。
それは、混み合う時間を割けることが一番です。ではどの時期が、乳腺科が混んでいるのかというと、次のようなケースがあります。
- テレビで乳がんに関する報道があった後
- 乳がんクーポンによる繁忙期
テレビで乳がんに関する報道があった後
小林麻央さんや北斗晶さんをはじめ、芸能人や有名人の方が乳がんになった、という報道があった後は、やはり乳腺科が混み合います。
たとえば北斗晶さんの報道直後は、全国の乳腺科や検診施設、クリニックに問い合わせが殺到して、なかには予約でいっぱいになり、検診の申し込みを断らなければいけない病院やクリニックもあったようです。
同じように、テレビ番組で乳がんの恐ろしさや治療法などの特集が組まれると、放送後はしばらく問い合わせが増え、検診の予約もいっぱいになることが多いです。
北斗さんが身体の異変に気づいたのは「胸がチクチクしたから」とのことで、報道直後は「胸がチクチクする」と訴える初診の患者さんが増えました。また、テレビ番組の特集で、何かひとつでも乳がんの例が紹介されると、「自分もそれに当てはまっている気がする」と、病院を訪れる患者さんも増えたりします。
キッカケが何であれ、「時間がないから」と後回しにしていた乳がん検診を受ける女性が増えるのは、よいことだと思います。
ただし、テレビ報道がキッカケだと、同じように感じた女性が病院に殺到し、乳腺科が混み合って診察に時間がかかる場合も出てきます。
もちろん、芸能人や有名人の方が乳がんになるかどうか、その報道があるかどうかは、事前に予測することはできません。かといって、報道からしばらく経って受診しよう……と思っても、同じように考えている人たちで混み合う可能性もあります。
そこで、テレビ報道をキッカケに乳がん検診を考えてみるのもよいですが、それ以上に、日常のセルフチェックや病院での受診を考えていただきたいと思っています。
乳がんクーポンによる繁忙期・閑散期
乳がん検診には、自治体が発行するクーポン(乳がん検診クーポン)があります。 クーポンの発送時期などは自治体によりますが、だいたい毎年4月になると各自治体でクーポンの送付準備が始まり、5月頃に対象者へ郵送され、手元に届いた人からクーポンを使うことができます(誕生月に送付する自治体などもあるようです。対象者がばらけるのでよい方法だと思います)。
クーポンがあると、自治体の集団検診を受診するか、提携病院で検診を受ける場合は無料~数千円(自治体によって異なります)で受診することができます。 本来だと1万5千円ほどかかる検査を、その費用で受けることができるのですから、ぜひクーポンを利用して乳がん検診を受けていただきたいところです。
ただ、クーポンを利用して乳がん検診を受ける「繁忙期」があることには、ご注意ください。 その繁忙期とは主に次の2つです。
- クーポンが送付された直後の6月から11月まで
- クーポンの有効期限である年度末(2月から3月頃)
乳がん検診クーポンが5月に届くと、そこから乳がん検診が混み合います。
また、クーポンには有効期限があり、たいていの場合、年度末の2月から3月頃です。
忙しい師走を過ぎ、年度末の有効期限前に検診を受ける「駆け込み受診」が増え、いざ検診を受けようと思っても、予約でいっぱいになっていることもあるようです。
反対に、クーポンを利用せず個人で乳がん検診を受ける場合は、繁忙期以外の3月から4月が狙い目ではないでしょうか。
クーポンを利用する場合でも、3月から5月はじめ頃は比較的空いています。
もうひとつ、この時期は乳腺外来も空いていることが多いのをご存知でしょうか。
たとえばクーポンが届いた5月に乳がん検診を受けると、検診の結果は1カ月後の6月ごろに届きます。その時期から乳腺外来の受診も増え始めます。
つまり乳がん検診が空いている時期は、乳腺外来も空いていることが多いのです。
こうした繁忙期・閑散期を考えながら、乳がん検診を受けるスケジュールを考えてみるとよいでしょう。
人間ドックで乳がん検診を受ける場合は……
夫の会社の「主婦検診」(家族検診)を受ける場合は、ご自身が受けている検査項目は入っているもの・入っていないものを知っておいてください。
検査項目は、人間ドックによって様々です。乳がん検診については、人間ドックではマンモグラフィもエコーも含まれていないことがあります(一般的には、どちらかを選ぶ形が多いです)。
それでも多くの場合、オプションとしてマンモグラフィとエコー、両方の検査を行ってくれます。オプション費用は数千円であることが多いので、ぜひ検討してみてください。
お友達と一緒に乳がん検診に行ってみよう
ひとりではなく友達と一緒に検診を受ける、という方法もあります。
友人から「みんなで検診に行こう」と誘われ、断り切れずに検診へ行ったところ、乳がんではないことがわかり安心して帰宅された方もいます。
また、キッズエリアが併設された医療機関に、ママ友と一緒に検診を受けに行き、検診の間はお互いの子供を見ている、というケースもありました。
お友達ではなく、母娘で一緒に検診を受けることも多いようです。
お友達や家族と一緒に、お出かけするように乳がん検診を受けに行く。それぐらい気軽な気持ちで検診に来てほしいと思います。
うまく病院に通う方法とは?
乳がん検診を受けた後、手術や治療のために病院へ通うことになった場合は、主治医としっかりコミュニケーションをとっていくことが大切です。
これは乳がんに限りませんが、患者には次の4つのモデルがあるといわれています。
- 情報型
- 解釈型
- 審議型
- 父権型
現代は情報社会、インターネット社会です。ネットで自身の病気関する情報を得たり、積極的にセカンドオピニオンを求める患者さんは「情報型」です。
情報型の患者さんは、検査のデータや医師の見解、様々な治療法に関する情報をすべて得たうえで、患者さんご自身が治療法を選択します。
医師としても、すべての情報を開示し、内容を説明したうえで、患者さんが選択した治療を行います。
反対に、治療法をすべて医師に任せることで安心するタイプの患者さんは「父権型」です。
とはいえ、医師もただ任せられるだけではありません。患者さんに、最善と考えられる治療法を伝え、その理由もしっかりと説明したうえで、患者さんは医師にすべてを任せてくれるのです。
そしてこの「情報型」と「父権型」の中間ともいえるモデルが、「解釈型」と「審議型」です。
いずれのモデルであっても、患者さんと医師がしっかりと話し合ったうえで、治療を進めていく点は変わりません。
「インフォームド・コンセント」という言葉がありますが、これは患者さんが、医師から病気や治療法について十分な説明を受けたうえで、同意して治療を受けることをいいます。
乳がんには様々な治療法がある一方、患者さんの希望もあります。そのため、医師が最善と思う治療法を提示し、患者さんに理解してもらう必要があるのです。
とはいえ、なかなか医師に相談しにくい悩みを抱えている患者さんもいるでしょうし、あるいは患者さんが医師からの情報や説明に納得できない場合もあるでしょう。
その場合は、次の3つの方法を検討してみてください。
- 看護師さんに相談してみる
- 担当医を変えてもらう
- セカンドオピニオンを求める
看護師さんに相談してみる
医療機関で医師とともに、よき相談相手になってくれるのが看護師さんです。
診察の前に患者さんに声をかけ、どんなことで困っているのか、医師からどんなことを聞きたいのかを患者さんから聞き取り、医師に伝えてくれる看護師さんがいます。
また、患者さんから治療法や入院期間、手術代や治療費などお金のことまで、様々な疑問・質問に優しく答えてくれる存在が、看護師さんなのです。
もし医師に相談しにくいことがあれば、ぜひ看護師さんにも話をしてみてください。
担当医を変えてもらう
医師も患者さんもお互い人間ですので、「相性」というものがあって当然かと思います。
どうしても医師との相性が悪いと感じたり、医師に対して不信感が募った場合は、担当医を変えることを検討したほうがよいかもしれません。
同じ病院でも、外来で通う曜日を変えると、担当医も変わる場合がありますし、病院を変えることもひとつの手段です。
セカンドオピニオンを求める
セカンドオピニオンとは、医師から提示された診断結果や治療法について、患者さんが別の医師に意見を求めることをいいます。
すでに欧米では盛んに行われており、最近では日本でもセカンドオピニオンの考え方が普及しつつあります。
ただ、日本人の気質として、「他の先生に意見を聞いたら、主治医の先生に悪い……」と考える人も多いようで、実際にセカンドオピニオンを聞きに行くと言われて嫌な反応を見せる医師もいると聞きます。
すべてを納得したうえで治療を受けるのは、患者さんの権利であり、セカンドオピニオンを聞きに行くこと自体には、問題はありません。
しかし、セカンドオピニオンにも課題がないわけではなく、なかには「ドクターショッピング」をしている患者さんもいます。
ドクターショッピングとは、自分が望む答えを言ってくれる医師に出会うまで、いくつもの医療機関に足を運ぶことをいいます。
確かに患者さんが納得したうえで治療を行うことは重要ですが、もともと患者さんが間違った治療法に関する情報を持っており、その治療法が良いという医師に出会ったら、どうなるでしょうか。
結果的に、その患者さんは有効な治療を受けることができません。それがドクタ―ショッピングの問題点です。
さらに時間と費用もかかりますし、時間がかかれば、そのぶん治療を始めるのも遅くなってしまうので、やはりドクターショッピングはお勧めできません。
乳がんの治療のためには、自分が受けている治療法がどのようなもので、そのメリットとデメリットを把握し、納得して治療を受けることが大切です。
そのためにも、ドクターショッピングに陥ることなく、しっかりと医師や看護師さんとコミュニケーションを取りながら、治療に臨んでください。