近年、日本女性の乳がん罹患率が急上昇しています。
乳房に少しでも異常があると、「もしかしたら乳がんにかかってしまったのでは……」と不安になりますよね。
でも、しこりがあるからといって、必ずしも乳がんとは限りません。
しこりを感じるケースが多いため、乳がんと間違えやすい病気がいくつかあります。
いざというときに慌てないよう、そんな病気について知っておきましょう。
乳腺線維腺腫
乳腺線維腺腫は、乳房にしこりができる病気のひとつです。
良性の腫瘍なので、ほとんどの場合、治療の必要はありません。
しかし、画像検査で乳がんと見分けがつきにくい場合もあるので、注意が必要です。
片側に多発することも、両側に発症することもあります。ただし、線維腺腫ががん化することはありません。
乳腺線維腺腫の原因
思春期以降の若い女性に発症することが多いため、卵巣ホルモンが何らかの発症原因になっていると考えられます。
思春期に小さな線維腺腫ができ、次第に大きくなって、20歳前後にはっきりと触れるしこりとしてわかるケースが多いようです。
線維腺腫が大きくなる速度は個人差があり、症状を自覚する年齢も10代後半から40歳前後までと幅広いようです。
乳腺線維腺腫の症状
乳がんと同じように、痛みのないしこりができます。
一般的には乳がんと比べてしこりの表面がなだらかでキョロキョロ動きやすいと言われていますが、触診だけで区別することは難しく、検査が必要です。
乳腺線維腺腫の検査
乳房のX線撮影、超音波検査、細胞診検査などを行います。
正確な判断をするために針生検(針でしこりの組織の一部を採取し顕微鏡で調べる検査)を行うこともあります。
乳腺線維腺腫の治療
基本的には治療の必要はなく、経過観察だけで十分です。
しかし、明らかに美容上の問題となるほど大きくなったり、発育が比較的早いケースでは、手術で摘出することがありますが、それほど多くはありません。
切除が必要な場合は、手術痕が目立たないように乳輪切開、乳房下縁切開などの方法が用いられます。
もししこりに気づいたら、まずは専門医の診察を受けましょう。乳がんなどの悪性疾患ではないことを確認しておけば安心です。
乳腺症
乳腺症は、30~50代の女性に多く見られる、女性ホルモンのバランスの変化によって引き起こされる正常な範囲の変化です。病気ではありません。
ただ、病気ではないのですが、乳房の痛みやしこり感、張りなどの症状が出ることがあります。
乳腺症の原因
乳腺症は、女性ホルモンのバランスの変化が原因とされています。
乳腺症の症状
乳腺症による乳房の痛みのタイミングには、月経周期が大きく関わっています。
特に月経前に症状が強まることが多く、痛みが増したり、しこり感が増したりすることもあります。
また一部の人では、乳首から透明~薄黄色の分泌液がみられることもあります。生理後には痛みは弱まります。
乳腺症の検査
乳がんの場合と同様、マンモグラフィや超音波検査などを行います。
乳腺症の治療
乳腺症は病気ではありませんので、、治療は必要ありません。
しかし痛みがひどい場合は痛み止めの内服をしてもよいかもしれません。閉経期を過ぎると、痛みが急に治っていくことが多いようです。
乳腺症がホルモンバランスの崩れが原因と考えられているので、ホルモンバランスを整えるよう、生活習慣を見直すことも大切です。
睡眠をきちんと取ったり、バランスの良い食事を心がけたりしましょう。
また、脂肪やカフェインの摂取を減らすのもよいようです。
乳腺炎
赤ちゃんに授乳中のママについて回るのが、乳腺炎の心配です。
出産後、授乳の時期に起こしやすい病気で、乳房が腫れたり、しこりができたり、高熱が出たりします。
乳腺炎の原因
乳腺炎には、非感染性と感染性の2タイプがあります。
非感染性=「うっ滞性乳腺炎」
乳腺に母乳が溜まり、詰まって炎症が起こります。
感染性に比べると、痛みは比較的少ないようです。
初産の1~2週間目ごろや、授乳をやめる卒乳のころによく起こります。
母乳が溜まってしまう理由としては、
- 赤ちゃんの母乳の飲み方が偏っている
- 授乳間隔にバラつきがあったり、母乳の飲み残しがあったりする
- きついブラジャーや姿勢の悪さなどで胸部が圧迫されている
などがないか、確認してみましょう。
感染性=「化膿性乳腺炎」
細菌感染によって起こる炎症です。
赤ちゃんの口を通して細菌が入ったり、うっ滞乳腺炎が悪化することによって発症します。
乳腺炎の症状
患部が赤く腫れ、固いしこりになります。
赤く腫れた部分を押したときに痛んだり、赤ちゃんを抱っこすると胸のあたりが痛んだりします。
熱や寒気、頭痛、関節痛が出ることも。また、半透明の白い色ではなく、黄色っぽい母乳が出たりします。
乳腺炎の検査
乳房が赤く腫れたり痛みなどの違和感が生じたら、自己判断は禁物です。
まずは、出産のときにお世話になった産婦人科で診てもらうとよいでしょう。
細菌性の乳腺炎の場合は、抗菌薬を服用する必要があります。
基本的には授乳を続けられる薬が処方されますが、念のため、授乳していいか確認しておきましょう。
授乳期の乳腺炎の予防
左右バランスよく授乳する
どちらか片方ばかりでの授乳や、同じような抱き方での授乳はやめて、左右交互に与えるようにしましょう。
乳腺は乳首を中心に放射状に広がっているため、片方だけや、同じ抱き方で授乳していると母乳が外に出ず、乳腺に母乳が残ったままになってしまうので、詰まりやすくなります。
授乳前に圧抜きをする
乳房が張っていると赤ちゃんがくわえにくいので、乳首をつまむようにして、軽く圧を抜いてから授乳しましょう。
圧抜きは、人差し指と親指が平行になるように乳輪の外側におき、中央に押すように、乳首の方に向かって圧迫します。
赤ちゃんの抱き方を工夫する
赤ちゃんに吸ってもらうと、しこりの解消につながります。
赤ちゃんの舌がしこりのある側にくるようにし、しこりのある方から授乳を始めます。
しこりの部分を手で軽く押さえながら吸わせますが、強く押さえすぎると乳腺を傷つけてしまうので注意してください。
わきにしこりがある場合は、フットボールのボールを抱くような形で授乳しましょう。
乳房の内側にしこりがある場合は横抱きにするなど、しこりのある位置に合わせて、赤ちゃんの抱き方を変えましょう。
搾乳するときの注意
搾乳するときも圧抜きしてから行うとよいでしょう。
搾乳後も痛みがあるときは、少し軽くなる程度にしぼって、乳房が張った状態を保つと、過剰な分泌を抑えることができます。
あまりしぼりすぎると母乳の分泌が増えてしまうので、乳輪部がほぐれる程度を心がけてください。