乳がんの患者数は、近年ますます増えてきています。
一方で、乳がんは早期発見・早期治療によって治るがんのひとつです。
そこでインフォームド・コンセントやセカンドオピニオンを活用し、納得のいく治療を選択できるようにしましょう。
乳がんの症状はどのように変化していく?
乳がんは進行具合によって、さまざまな症状が現れます。
乳がんを完全に治すことを目的とする初期治療へつなげるために、乳がんの症状について理解しておきましょう。
初期の乳がんはどんな症状?
初期の乳がんは、ほとんど自覚症状がありません。
乳がんでは、がんの進行とともに以下のような症状が現れます。
- 乳房に硬くて動かないようなしこりがある
- 乳房の一部にくぼみができる
- 乳房が痛い、腫れている
- 乳房が熱っぽい
- 左右で乳房の大きさが違う
- 脇の下にしこりがあり、腫れている
- 乳房付近の皮膚が硬くなったような感じがする
この中でも特にわかりやすいのが、しこりです。
約1cmを超えると、自分でもわかるくらいの大きさになります。
しかし、奥に潜んでいて触れないしこりも存在し、気づいたら他の臓器に転移していることもあります。
また、脇の下に違和感がある場合は、リンパ節への転移が疑われます。
治療を選択することは容易ではない
初期治療とは、乳がんと診断されてから最初に受ける治療のことです。
病状や患者さんの希望に合わせて最適な治療を組み合わせて、再発を抑え、完全に治すことを目的としています。
乳がんと診断されてから、病気を心から受け入れるには、時間と労力を必要とします。
初期治療を落ち着いて決めるためには、しっかりと話をしてくれる医師の存在が不可欠です。
インフォームド・コンセントを活用しよう
かつて日本の医療は、医師が提案した治療に患者が従うものでした。
1990年代後半から患者さんが治療を自己決定できるように支援する「インフォームド・コンセント」が取り入れられるようになっています。
インフォームド・コンセントとは?
インフォームド・コンセントとは、“説明と同意”という意味です。
治療法などについて、医師から十分な説明を受け、患者さんが十分に理解した上で、自らの自由意志に基づいて治療方針について合意することを言います。
患者さんが十分な説明を受けられるよう法律でも定められています。
心の声を聞いてくれる医師に出会うために
治療方針を決めることは、自分の命や人生に関わる重大な選択です。
信頼できる医師や医療従事者と一緒に決めていくことが重要なポイントです。
信頼できる医師に出会うためには、以下の5つのポイントをおさえておくとよいでしょう。
- 目を見て話してくれるか
- 患者さんの話をよく聞いてくれるか
- 困っていることを聞いてくれるか
- わかりやすく説明をしてくれるか
- 根拠ある治療の中から最善の方法を提案してくれるか
医師が手をとめて、目を見て、わかりやすく丁寧に話をしてくれるかどうかがカギです。
趣味や生活など生きがいについて世間話も交えて話を聞いてくれるようであれば、患者さんのことをよく考えてくれている医師でしょう。
また、短い時間でも要点をまとめて話してくれる医師であれば、安心できるのかもしれません。
それでも納得いかないときは~セカンドオピニオンのすすめ
主治医も1人の人間ですので、相性がよくない場合や治療方針に納得がいかない場合もあることでしょう。
でも患者さんにとっては、今後の人生がかかっていますので、決して後悔はしたくないですよね。
乳がんなど進行性の病気では、早期に治療を開始することが望まれます。
自分で新しい病院や医師を探して、受診し直すのも不可能ではありませんが、時間も費用も費やしてしまいます。
そこで、セカンドオピニオンという制度を活用することができます。
セカンドオピニオンと聞くと、主治医を変えたり、転院したり、治療を変えなくてはいけないと思う方もいますが、そうではありません。
セカンドオピニオンとは「第2の意見」ですので、治療を進めていく上で、「他の医師の意見を参考にする」程度に考えれば、気持ちに余裕ができるのではないでしょうか。
もちろん、治療の選択の幅が広がりますし、病気や治療の知識を深めることもできます。
そして、セカンドオピニオンには手順があります。
正しい手順を確認することで、主治医と患者さん双方にとって嫌な気持ちにならず、治療を進めることができます。
正しいセカンドオピニオンの手順
1. 主治医に紹介状を書いてもらう
紹介状は、正式には「診療情報提供書」と言います。
紹介状を書いてもらう前には、必ず主治医の治療方針について理解をしておきましょう。
治療について理解することと、納得のいく治療を選択することは異なります。
治療内容と方針を理解して、どのような点で納得がいかなかったのかを明確にしておくと、セカンドオピニオンの担当医からの説明もより早く、深く理解することができます。
また、主治医にはセカンドオピニオンを希望している旨を伝えることで、実施した検査内容や病状、また、どのような治療を提案しているのかを具体的に記載してくれます。
2. セカンドオピニオンをしてくれる病院を探す
セカンドオピニオンをしてくれる病院を探す場合は、時間がかかることがあります。
主治医や看護師、地域連携室のソーシャルワーカーに一度相談をしてみてください。
3. セカンドオピニオン外来を受診する
ほとんどのセカンドオピニオン外来では、予約が必要です。
限られた時間の中で、効率よく質問をする必要があるため、知りたいことに優先順位をつけて、3項目程度メモ書きにしておきましょう。
4. 元の主治医に相談をする
セカンドオピニオンを聞いた上での気持ちを、元の主治医へ伝えましょう。
この作業が最善な治療を選択する上で重要なポイントとなります。
そして、納得のいくよう主治医とよく話し合いましょう。
5. ドクターショッピングに注意
ドクターショッピングとは、病気を受け入れたくないために、自分の思う治療方針を追い求め、さまざまな病院を受診することを意味します。
セカンドオピニオン、サードオピニオンと複数の医師の意見を参考にすることは間違ってはいませんが、大事なのは主治医と自分で最善の治療を選択できること。
つまり、ドクターショッピングとセカンドオピニオン、サードオピニオンは目的が全くことなるのです。
納得のいく治療を選択してください
がんの治療方針を決めていくことは、気持ちを整理していく上でも、とても重要な作業です。
インフォームド・コンセントや、セカンドオピニオン、サードオピニオンの制度を利用し、納得のいく治療を選択できれば、がんと向き合う原動力になるでしょう。