放射線治療は、医療の進歩とともに最新の機器が誕生しています。
がんとともに生きる手助けになる、最先端の放射線治療についてご説明します。
乳がんになっても治癒する時代へ
女性がかかる代表的な乳がんですが、医療の進歩とともにさまざまな治療法が確立されてきました。
ごくわずかなしこりを発見し乳房を温存する治療法であったり、再発をしないようがんを根絶させる放射線治療であったり、患者さんが自分らしく生きることができるよう日々変化しています。
乳がんの治療を知る上で欠かせない、放射線治療についてご説明します。
乳がんにおける放射線治療とは?
乳がんの放射線治療は、手術療法や薬物療法に並ぶ大きな3本柱のひとつです。
放射線治療の特徴には、以下のようなものが挙げられます。
- 形や機能を残すことができる
- 体力のない高齢者にも負担がかからない
- 頭の先からつま先まで治療ができる
- 外来通院ができる
抗がん剤を服用すると髪の毛の脱毛などの全身への副作用が現れます。
一方で、放射線治療ではがんだけに焦点をあてて治療をするため、基本的には放射線をあててない部位には副作用は出ません。
乳がんの放射線治療では、一般的に乳房の手術後、再発を防ぐために用いられます。
目に見えるがんは取り除けたとしても、目に見えないがんが体に潜んでる可能性があります。
その場合、がんが潜んでいる可能性のある部位に放射線治療を行い、がんを根絶します。
放射線療法の副作用を知っておこう
- 皮膚炎
- 脱毛
- 口内炎、口腔乾燥
- 倦怠感
- 肺炎
皮膚炎
治療を開始してから約1カ月すると、放射線を照射している皮膚が赤くほてったようにヒリヒリします。
冷やしたり軟膏を塗ることで、だんだん落ち着いてきます。
脱毛
放射線を照射した部位のみ脱毛が起こります。
照射部位が乳房であれば、髪の毛の脱毛は起こりません。
一方で脳に照射した場合は、約2~3週後に脱毛が始まります。
あらかじめ髪を短く切ったり柔らかい素材の帽子を用意しておくとよいでしょう。
口内炎、口腔乾燥
口腔や頭頸部へ放射線を照射した場合、口内炎や口腔内が乾燥する症状が出ます。
約1カ月程度でだんだん落ち着いてきます。
倦怠感
放射線宿酔によってからだがだるくなったり、疲れやすくなったりします。治
療後数日で良くなることもあります。
肺炎
ごくまれに放射線により肺炎を起こすことがありますが、長引く咳や発熱があるときは早めに主治医へ相談すれば問題ありません。
最先端の放射線治療
放射線治療はめまぐるしく変化しています。
乳がん治療でも活躍をする最先端の技術についてご説明します。
- サイバーナイフ
- トモセラピー
サイバーナイフ
サイバーナイフは、ロボットアームの先端に取り付けられた放射線治療装置が体のまわりを自由自在に動きます。
今までの放射線治療は、複雑な形状のがんに放射線を照射することが困難でしたが、サイバーナイフは複雑な形状のがんでも問題なく照射ができます。
また、患者さんの1mmの動きを補正し、正確に対象のがんを狙うことを得意としています。
つまり、がんではない正常な細胞はあまりダメージを受けなくなります。
サイバーナイフは、呼吸を止めたり、固定器具を使用したりしないので、患者さんも楽に治療を受けることができます。
1回の治療は約30分で終わります。
トモセラピー
トモセラピーはドーナツ型の機器であり、CTと少し似ています。
トモセラピーは、CTと放射線装置が合わさった機器です。
ドーナツ型の機器が回ることで細い放射線のビームを照射していきます。
トモセラピーによって、曲がりくねった複雑ながんに対してもピンポイントで放射線を照射できるようになりました。
治療の前に毎回CT検査を行い、その都度変化した部分がないか誤差を補正して、放射線を照射します。
そのため、正常な細胞へのダメージを極力減らして、副作用を少なくできます。
1回の治療は約20分前後で終わります。
元気な細胞をできるだけ残す最新治療
トモセラピーは、IMRT(強度変調放射線治療)とIGRT(画像誘導放射線治療)によって、従来よりも正確そして確実に放射線治療ができるようになりました。
最新医療であるIMRTとIGRTについてご説明します。
IMRT(強度変調放射線治療)
IMRT(強度変調放射線治療)は、さまざまな方向から強弱をつけて放射線の量を変えて照射します。
放射線の量を変えることで、曲がりくねった複雑ながんの形に合わせた照射が可能になり、へこみにある正常な細胞には放射線が照射しないようにできます。
元気な細胞には、放射線を照射せず、がんがある部位にはしっかりとした量の放射線を照射して根絶させるのです。
また、IMRTの効果がある代表的な例が前立腺がんです。
従来では手術できない部位に対し、形を残したまま放射線を照射できるため、排尿機能などが保たれQOL(生活の質)を向上させることができます。
IGRT(画像誘導放射線治療)
放射線治療の補助技術として用いられるのが、IGRT(画像誘導放射線治療)です。
IGRTには、X線を撮影できる機器を搭載しているものもあり、治療直前に撮影したものと基準のものとの位置ズレを把握し、位置補正を行います。
そうすることで、元気な細胞に放射線を照射しないよう微調整してくれます。
放射線治療は“希望の治療”
放射線治療は、補助治療の役割はもちろん、がんとともに生きる人にとって手助けになる治療のひとつです。
サイバーナイフやトモセラピーなど最新機器を取り入れている病院も増えてきています。放射線治療は乳がんと闘う人にとっても希望の治療ではないでしょうか。
注意すべきことは、必ずしも最先端医療が標準医療であるとは限りません。
メリットやデメリットを主治医ときちんと話し合った上で、自分にあった治療を選択していきましょう。