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定期検診とともに習慣化を~乳がんセルフチェックの方法とポイント

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乳がん検診の重要性

乳がんの「三大アーリー」をご存知でしょうか?
「早期検査」「早期発見」「早期治療」のことですが、これはどのような疾患にも当てはまるといっていいでしょう。

たとえばインフルエンザにかかったとき。
「ただの風邪だろう」と自己診断してしまい、病状がかなり悪化してから慌てて病院へ駆け込むケースがあります。
このとき早めに検査してインフルエンザと診断を受けたなら、適切な治療によってこじらせずに治癒することが可能です(ただしインフルエンザの場合は早すぎるとかえって診断がつかないこともあります)。

乳がんも同じです。
きちんと定期検診を受けて“乳がんの疑いがある”と診断されたらすぐに病院を受診する、もしくは検査と検査の間でも異変を感じたら病院へ行く。
これはあなたの大切な命を守ることにつながります。
三大アーリーの実践によって乳がんで命を落とす可能性を大きく減らすことができるのです。

検査

さまざまなメディアで乳がんに関する報道がされていますが、それでも
「乳がんと診断されたら怖いから検査を受けに行かない」
「忙しくて検診へ行っている時間がない」
など消極的な意見を耳にすることがあります。
場合によっては“もしかしたら”と自覚症状があるにもかかわらず検診へ行かない、という人も。

そのシコリ、もしかしたら乳がんかもしれません。
乳首から分泌物が出るのを乳腺炎と自己診断していませんか?
書物やインターネットでさまざまな疾病の症状などが紹介されていますが、それらを鵜呑みにして「私は大丈夫」と過信するのは大変危険です。
乳がんという恐ろしい事実に直面したくない、という気持ちを優先させるあまり、早期治療、完治のチャンスを逃すようなことにならないよう、この瞬間から意識改革をしてください。

セルフチェックの重要性

2000年、厚生労働省からマンモグラフィを導入した乳がん検診の推進が提言され、全国の各自治体で50歳以上の女性に対し、2年に一度の視触診とマンモグラフィの併用検診がスタートしました。
そして2004年には検診の見直しが行われ、対象年齢が40歳以上へと引き下げられました。
マンモグラフィは乳がんの発見に有効な検査方法とされていますが、乳腺が発達していない若い世代や逆に乳腺が非常に発達しているデンスブレストの人の場合、異変を見つけるのが難しい場合があります。

また、20代でも乳がんにかかる可能性もあることから、ぜひ習慣にしてほしいのがセルフチェックです。
定期検診と併せて行うことで乳がんの早期発見率が大きくアップします。
肺や胃、腸などの内臓に起こった異変を視触診で発見するのは不可能です。
しかし乳がんは皮膚の表面に近い部分にできやすいことから、触れたり乳房の形に変化がないか目で見て確認することで、自分で発見できます。

お風呂

「特に意識して乳がんチェックをしていたわけではなかったけれど、お風呂で体を洗っているとき胸にシコリのようなものがあるのに気がついて、病院へ行ったら乳がんが発見された」
「着替えているとき鏡を見たら胸にくぼみのようなものが。気になって検査してみたら乳がんだった」
これらのように、日常生活でちょっとした異変を感じたので病院へ行ったら乳がんが見つかった、というエピソードも少なくありません。

セルフチェックは難しくありません。
お風呂に入る、ボディケアをするのと同じように習慣にすれば、いたずらに乳がんを怖がる必要がなくなります。
まずは次のポイントをもとに、セルフチェックを始めてみてください。

  • 生理が始まってから10日以内程度の、乳房のハリや痛みがなくなって乳房がやわらかなときに行う。
  • 閉経後は毎月1回、セルフチェックの日を決める(毎月1日(ついたち)、自分が生まれた日など、忘れにくい日にする)。

5つのセルフチェック方法

乳がんのセルフチェックには、主に次のような方法があります。

  • 鏡の前で
  • お風呂で
  • 下着を確認
  • 横になって
  • 乳首のチェック

鏡の前で

チェック

鏡の前で両手を上げた状態と両手を下げた状態、それぞれで乳房や乳首を観察する。乳房の表面に凹みや引きつれ、乳首からの分泌物、乳首にかさぶたやただれがないかをチェック。

お風呂で

セルフチェック

お風呂で手に石けんを付けて指をそろえ、指全体で“のの字”を書くようにして乳房全体を触ってみる。鎖骨の下、乳房の下、ワキも忘れずにチェックを。

下着を確認

下着の乳首が当たっている部分が汚れていないかを確認。汚れている場合は乳首に異変がないかを細かくチェック。

  • 乳首から分泌液が出ている場合、両方の乳首にある小さな孔(あな)の何カ所から白~無色の液が出ているなら基本的に心配はいらない。
  • 片方の乳首のひとつの孔から黄色~茶褐色~赤色の液が出ている、いつも下着の片方だけにシミが付いている場合は病院へ。
  • カラフルなブラジャーやキャミソールを身に着けることが多い場合は、ティッシュペーパーを挟むなどして分泌液がないか確認を。

横になって

仰向け1

仰向け2

  1. 仰向けに寝て、薄いクッションか折りたたんだバスタオルを背中の下に入れる。
  2. 左手を頭の下へ。
  3. 右手の指をそろえてのばし、左乳房の内側を調べる。
  4. 右手の指の腹で左乳房の内側(乳首よりも内側)から胸の中央に向かって、まんべんなくすべらせ、シコリや変形がないか調べる(乳房をわしづかみにすると乳房全体がしこりの様に感じます。つかむのではなく、すべらせるように!)。
  5. 反対側の乳房も同様に行う。

乳首のチェック

分泌物

左右の乳首を軽くつまんで分泌物が出ないかどうかチェックする。

こんなときは検査を受けましょう

セルフチェックの結果、次のような症状があるときは乳がんを疑いましょう。

  • 乳房にシコリがある
  • ワキの下にシコリがある
  • 乳房の皮膚に引きつれがある
  • 乳房に“えくぼ”のようなくぼみがある
  • 右と左の乳房の大きさや張りに明らかに差がある
  • 片方の乳首に治らない擦り傷のようなものがある
  • 片方の乳首の先の、ひとつの孔から黄色~茶褐色~赤色の分泌液が出る

乳房にシコリ(固くゴリゴリしたもの)がある

乳がんのシコリにはさまざまな大きさがあります。
セルフチェックでわかる大きさは1cm~2cm以上。
1cm以下の場合や胸が大きい人は見つけられない場合があります。
シコリの硬さは種類によって異なりますが、乳がんの場合は石ころのような感じがあります。

ワキの下にシコリがある

乳がんというと、どうしても乳房の状態を重要視しがちですが、しこり同時にチェックしなければならないのがワキの下です。
ワキの下には乳房につながるリンパ節があり、ワキにしこりができたことで乳がんが発見されるケースもあります。

 

乳房の皮膚に引きつれがある

乳房にがんができると、がん細胞に引っ張られるようにして乳房表面の皮膚がツレてくることがあります。
鏡で見て、これまでの形状と違う、皮膚が引っ張られているような違和感があれば、すぐに病院を受診してください。

乳房に“えくぼ”のようなくぼみがある

胸の中にできたがんが乳房の組織、乳房につながる皮膚の組織を引っ張るため、皮膚表面が内側に引っ張られて“えくぼ”のようなくぼみができます。
鏡に映して観察してみてください。
両手を上げてみると、よりはっきりわかる場合があります。

右と左の乳房の大きさや張りに明らかに差がある

どちらかの乳房にがんが発生すると、乳房の形乳房の形が変形してくることがあります。
これまでほぼ左右対称、同じような張りだったのに明らかに左右差が出てきたときは乳がんを疑ってみるべきです。

 

片方の乳首に治らない擦り傷のようなものがある

乳首の皮膚表面にがん細胞ができるタイプの乳がんでは、乳首の先端がジュクジュクした擦り傷のようになることがあります。
これは「パジェット病」といわれるもので、乳がんだと気がつかずに皮膚科を受診することが多いようです。

片方の乳首の先の、ひとつの孔から黄色~茶褐色~赤色の分泌液が出る

乳首には母乳が出てくる小さな孔がいくつもあいていますが、その一カ所から色が付いた分泌液がみられる場合、乳がんを疑ったほうがいいでしょう。
孔は「乳管」と呼ばれる管に枝分かれしていて、その先にある母乳をつくる小葉という組織につながっています。
乳がんの9割が「乳管」内部に発生しますが、孔から色のついた分泌液が出るということは、孔につながる乳管もしくは小葉にがんがある可能性が高いといえます。

しかし、分泌液があるからとすぐにがんを疑う必要はありません。
乳首の小さな孔のうち、いくつもの孔から出ている、透明や白色をしている場合は、少量の母乳や正常範囲内の分泌液なので乳がんではありません。
場合によっては安定剤などの精神科で処方される薬を飲んでいる人に、乳首から良性の分泌液が出ることがあります。
また、プロラクチンという母乳を出すためのホルモンが多いことで母乳が分泌されているケースもあります(採血検査ですぐにわかります)。
この場合は内分泌科での治療になります。

すべてがシコリに感じられるのは?

乳腺はブロッコリーのようなボコボコした形状の組織で、乳腺の上に皮下脂肪があり、その上に皮膚があります。
やわらかな脂肪に対し、乳腺の組織は硬いため上から強く触ると脂肪が圧迫されて、ボコボコした乳腺に触れることになります。

組織

「乳房を触ってみたら、あちこちゴリゴリしていて不安になった」という方も多くいますが、それらはしこりではなく乳腺そのものであり、ボコボコしているのは当たり前。
どうしても気になる場合は一度乳腺科に相談してみましょう。
検査して異常がなければ、それが自分の正常な乳腺の状態であることが理解できます。

セルフチェックと定期検診を怠らないでください

乳がんで亡くなる女性は2013年には1万3000人を超え、35年前と比べて3倍以上になっています。
厚生労働省が発表した人口動態統計では、2015年の乳がんによる死亡数(女性)は13,584人。
このような数字を目の当たりにすると不安になるのは無理からぬ話ですが、乳がんは他のがんに比べて、たとえかかったとしても治る可能性の高いがんなのです。
早期発見もしやすい部位なので、セルフチェックや定期検診によって早い段階で発見、適切な治療を受けることが可能です。

そして何より、セルフチェックはリスクも費用もかかりません。
あなたの大切な乳房を、命を守るためにセルフチェックと定期検診を習慣にしましょう。

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