コラム

肺がんのシームレスな治療体制の構築とは

高崎俊和 先生芳賀赤十字病院 呼吸器内科 主任部長

2009年 自治医科大学卒業後、福井県で地域医療に従奉
2018年 自治医科大学呼吸器内科
2020年より現職

山本健太郎 医師宇都宮セントラルクリニック 放射線治療 部長

肺がん診療

肺がん診療では、従来の外科治療や化学療法、放射線治療だけでなく、患者さん一人一人に合わせた分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤、新しい放射線治療などを提供することが重要です。

今回は、肺がん診療の第一線でご活躍されている、芳賀赤十字病院の高崎俊和先生に、肺がん診療のこれからと課題についてお伺いしました。

栃木県東医療圏の特性

  • 山本

    まず始めに、先生のこれまでの御経歴を簡単に教えてください。

  • 高崎

    私は長野県で生まれ福井県で育ち、自治医科大学卒業後は福井で地域医療に従事しました。その後、自治医科大学の呼吸器内科に戻り、2020年に芳賀赤十字病院に着任しました。

  • 山本

    芳賀赤十字病院は、真岡市と芳賀郡を含む人口約14万人の栃木県東医療圏における2次救急医療施設です。着任されて1年余りですが、慣れてこられましたか?

  • 高崎

    そうですね、着任当初は不慣れな点も多く大変なこともありました。

  • 山本

    どういう点が大変でしたか?

  • 高崎

    2020年の着任時には当院に呼吸器内科がなく、その立ち上げが大変でした。例えば当初、肺がん診断や化学療法、放射線治療についての勉強会を隔週で実施するなど、スタッフの教育が必要でした。放射線治療の勉強会を山本先生に実施していただいたのもその一環で、その節はありがとうございました。

  • 山本

    こちらこそありがとうございました。看護師さんや連携スタッフの方々にも放射線治療について理解いただくことは非常に重要だと私も考えています。さて、高崎先生はじめ3名が来られて待望の呼吸器内科ができたわけですが、どのような分野の患者さんが多いですか?

  • 高崎

    喫煙されていた高齢者の方がかなり多いので、COPDや肺がんの患者さんが多いです。

  • 山本

    芳賀赤十字病院では2019年の新病棟移転後、変化があったのでしょうか?

  • 高崎

    事務職員に聞くと、新築移転のタイミングで患者数が増えたようです。しかし、コロナ禍で当院や近隣施設の検診受診者数の減少を受け、今は病院の底力が試されるフェーズなのかもしれません。

肺がん診療の課題

  • 山本

    今後の肺がん治療にとって重要なこと、これから注目されていく課題などについて先生はどのようにお考えですか?

  • 高崎

    これからは地域の病院であっても、従来の外科治療や化学療法、放射線治療だけでなく、遺伝子パネル検査を可能な限り 実施し、一人一人に合わせた分子標的薬や免疫チェックポイン卜阻害剤(ICI)などを届けられる体制が必要だと思います。また、暦年齢以上に元気な高齢者が多いので、一人一人の全身状態を診て、適切な抗がん剤治療や放射線治療を選択しなければならないと感じています。

  • 山本

    テーラーメイド医療の提供が重要ですね。一方、新しい薬を使うと、さまざまな副作用への対応が必要ですね。

  • 高崎

    そうです。ICIであれば潰瘍性大腸炎や神経系の副作用など免疫関連有害事象(irAE)が発現するので、他科との連携が必要です。

  • 山本

    かなり病状が進行し骨転移があるような息者さんに対する緩和ケアの取り組みはいかがでしょうか?

  • 高崎

    当院には多職種で取り組んでいる緩和ケアチームがあり、オピオイドの導入はできていますが、除痛日的の緩和照射やオリゴメタの定位照射は山本先生にご依頼しており助かっています。

宇都宮セントラルクリニックとの連携

  • 山本

    当院では、2年前にデジタルPETを導入しましたが、その画像のクオリティについて何か感じられることはありますか?

  • 高崎

    非常にクオリティが高いです。大変きれいなPETで、読影もしっかりつけていただいて本当に助かっています。

  • 山本

    真岡市から当院に通院して放射線治療やPET検査を受けるとすると車で30分ぐらいですが、ご自身で来るのが大変な患者さん には送迎を行っていて、患者さんからは結構好評のようです。また、昨年より芳賀赤十字病院に入院しながらUCCで放射線治療を実施できるよう体制を整えていただきました。

  • 高崎

    ステージⅢの患者さんなど、地元の病院に入院して化学療法をやりながら、放射線治療を受けられることに対して、満足度が高いという感じがします。放射線治療のために転院することなく、同じ病院で診断から治療までをシームレスにできるということは患者さんにとっても大きなメリットだと思います。

症例紹介

症例1

  • 山本

    86歳男性、左下葉肺がん(ステージIA)の患者さんでした。肺気腫が強く、合併症を考慮すると手術は無理な症例でしたので、サイバーナイフ55Gy/4frで動体追尾を用いて定位放射線治療を実施(図1-a)したところ、4ヵ月半くらいで病変部が崩れてきました(図1-b

  • 高崎

    寝ているだけでこんなに楽に4回の治療が終わることを、大変喜んでいました。

  • 図1-a:左下葉肺がんに対するサイバーナイフ治療 図1-b:治療4ヵ月後

症例2

  • 山本

    92歳男性、左下葉肺がん疑い(ステージⅡB)の患者さんでした。

  • 高崎

    92歳ですが、お元気で治療意欲がありました。

  • 山本

    Performance statusも良好でしたので根治的治療を行いました。気管や食道に近い病変の場合、精密に照射しないと気管/食道からの出血や穿孔のリスクが高くなるので、サイバーナイフの追尾技術を用いて 左下葉は55Gy/4fr、左肺門LNは50Gy/10frの定位放射線治療を行いました(図2-a)。治療3ヵ月で原発の方は崩れ、リンパ節の方も縮小しています(図2-b)。

  • 高崎

    すごく、いい感じですね。

  • 図2-a:リンパ節および左下葉肺がんに対するサイバーナイフ治療 図2-b:治療後

症例3

  • 山本

    72歳男性、肺がん(ステジⅢB)の患者さんでした。以前は、ステージⅢの肺がんで対側リンパ腺に転移があれば放射線治療の適応外とされていました。

  • 高崎

    私は、即あきらめていました。

  • 山本

    しかし今では、強度変調放射線治療(IMRT)を用いることで、周りの肺への線量を抑えて腫瘍部に高線量をうまく当てることができます(図3)。この症例では抗がん剤併用でIMRT60Gy/30frを行いました。

  • 高崎

    化学療法実施のため当院で入院しながら、UCCで放射線治療を実施できた例でした。IMRTは腫瘍にうまく当てるイメージですか?

  • 山本

    そうですね。腫瘍の形状にあわせて高線量を照射できるため周囲臓器の被ばくをより減らすことができます。RTOG0617の事後解析でもIMRTを使ったほうがグレード2の肺臓炎の頻度が下がったというデータが出ているので、ステージⅢの肺がんに対してIMRTを用いることが今後増えると思います。

  • 高崎

    現在イミフィンジ投与中で良好に経過しています。

  • 図3:肺がんおよび対側リンパ節転移に対する強度変調放射線治療

症例4

  • 山本

    69歳男性、NSCLC(右上葉、Ad)の患者さんでした。脳転移およびSVC症候群に対する放射線治療の依頼があり、脳転移にはサイバーナイフ23Gy/lfr、SVC周囲腫瘤にはIMRT 25Gy/5frで緩和照射を実施しました(図4-a)。治療2ヵ月後には、SVC周囲の腫瘍が縮小し、むくみも改善され、楽になられたと思います(図4-b)。

  • 高崎

    照射していなければ、呼吸困難も増悪し、もうそのままお看取りになっていた可能性もありました。

  • 山本

    根治照射から緩和照射まで高崎先生には幅広くご紹介いただいております。

  • 高崎

    UCCとの入院連携の開始により放射線治療のハードルが下がったと感じています、引き続き一層の連携をよろしくお願いします。

  • 図4-1:脳転移およびSVC周囲腫痺に対するIMRT治療 図4-b:治療後

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