地域の皆様の期待に応えられる放射線治療センターを目指して
山本健太郎 医師放射線治療 部長
2003年防衛医科大学校卒。2007年より自衛隊中央病院及び東京大学医学部附属病院で放射線治療学の研修及び研究を開始。2015年東京大学医学部医学研究科卒業後、自衛隊中央病院放射線科放射線治療医長。
2018年帝京大学医学部附属病院放射線科講師、2019年国際医療福祉大学三田病院放射線科准教授を経て、2020年より現職。
2020年4月に就任。皆様からの信頼感を感じながらの毎日です
宇都宮セントラルクリニックでは2018年に、定位放射線治療装置(サイバーナイフ)と強度変調放射線治療装置(トモセラピー)を備えた放射線治療センターを開設しました。
サイバーナイフとトモセラピーをともに保有する施設は現在でも国内で5施設のみで、栃木県内ではもちろん初のことです。当施設は今年で開設3年目になりますが、充実した画像診断装置ときめ細かい診療体制によって地域の予防医学に貢献してきた当院の実績を感じながら、皆様からの信頼感に応えるべく、日々の診療にあたっています。
サイバーナイフは、定位放射線治療に特化した機能を持っており、主に転移性脳腫瘍や手術不能の早期肺がんや転移性肺腫瘍、さらには前立線がんに対しても使用しています。特に、肺への照射については、呼吸追尾トラッキングシステムを用いることにより、肺腫瘍自体を追尾しながら照射するので、正常肺等周囲組織への障害を最小限にして治療することができます。開設時から徐々にご紹介が増えており、これまでに当院では300人以上の患者さんにサイバーナイフでの治療を実施させていただきました。定位放射線治療については、今年の診療報酬改定で脊椎転移や少数個転移(オリゴメタスターシス)が新たに保険収載されました。今後さらに治療の可能性が広がることと思います。
トモセラピーは、複雑な形状の腫瘍に対しても360゜方向から連続的に腫瘍に線量を集中して照射する強度放射線治療が可能な治療装置です。さらに、毎回の治療前のコーンビームCT撮影により、実際の病変部の確認を三次元的に行えるので、高精度の画像誘導放射線治療が可能です。治療適応としては、病変部周囲の正常組織への障害を最小限にしなければならない頭頚部がんや、前立線がん、進行肺がん等があげられ、当院でもこれらの疾患に対しトモセラピーで治療を実施しています。また、乳がんの術後照射や緩和照射などの放射線治療設備を持っていない病院からのご依頼も多くいただいています。これまでに当院では200人以上の治療をトモセラピーで行っております。すでに照射歴がある患者さんなど通常の放射線治療装置では治療が難しい患者さんも多くご紹介いただいておりますので、私も『患者さんと紹介してくださった先生方の期待に応えられる診療を」と心掛けています。
このように、がん周辺の正常組織を避けながら病変に正確に照射できるサイバーナイフとトモセラピーは、放射線治療で起こり得る副作用を軽減しつつ良好な治療効果が得られるため、患者さんの治療満足度が高い治療と言えます。また、トータルの治療期間と通院回数が短期間で済むことも息者さんにとって大きなメリットです。
さらに当院では、できるだけ早く治療を開始したい脳転移や骨転移などに対しては、治療精度を確保しつつ、最短で治療を実施できるようスタッフー丸となって努力しています。例えば、小さな脳転移の場合、最短で初診の2日後に治療を実施することが可能です。
トモセラピー
サイバーナイフ
スタッフと装置との距離の近さが迅速な治療開始の鍵
放射線治療センターは、クリニック本館とは独立した建屋となっており、息者さんやスタッフの導線がスムーズになるよう設計されています。また、放射線治療はチーム医療であり、経験豊かな医学物理士、放射線技師、看護師などのスタッフもとても気さくですので、就任間もない私とも良好なコミュニケーションを築いています。先ほど「治療開始までが早い」と述べましたが、これは良好なチームークの賜物だと考えています。これに加えて当院の魅力のひとつに、治療計画を立てるために必要なMRIやPET-CTといった高機能の画像診断装置をほぼいつでも使えることがあり、これも治療を迅速に行えることの理由です。スタッフや診断・治療装置との距離が近く、いつでもアクセスできることがクリニックである当院の強みであると感じています。
放射線治療は、どうしても連日の通院となることが多く、状態が悪く家族の付き添いを要する患者さんでは負担が大きくなることもあります。当院では、近隣の病院に入院しながら放射線治療を受けに来られる患者さんや近隣の患者さんについては送迎サービスも実施しており、このような自力通院が困難な患者さんからご好評をいただいています。クリニックならではのフットワークの高いサービス提供を心掛け、先生方がご紹介しやすい仕組み作りも大切だと考えています。
当クリニックが地域医療に迎え入れられている理由として、かねてから地域の医療機関からのPET-CTやMRIの画像診断のご依頼を頂き、実績を積み璽ねてきたことも挙げられます。また、市民啓発セミナーや放射線治療施設の見学会など、一般の方々に放射線治療を浸透させる取組も継続的に行ってきました。センター立ち上げ時より参画している東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵ー先生が、がん診療についての寄稿を下野新聞に連載されていたことなどで、当院が高精度放射線治療を提供していることの知名度が徐々に上がってきました。また、自治医科大学放射線科の白井克幸教授や獨協医科大学脳神経外科の植木敬介教授も診療を支援くださっており、双方で従来以上のレベルの診療を提供していこうとの意気込みです。
予防医学で高い認知度を得ている当院が、これからは先生方や患者さんから気軽に相談される地域の放射線治療センターとしても貢献していければと考えています。