代表的な症状

気胸

 

 
私たちの肺は、「胸腔」と呼ばれる肋骨に囲まれた空間にあります。その肺が何らかの原因で破けて胸腔が空気で満たされ、肺がつぶれてしまった状態を気胸といいます。

 
気胸の主な症状は、突然の胸の痛みと呼吸困難です。また、気胸を起こしやすい方は「気胸体型」といって、特徴的な体つきをしています。その特徴は、以下の3つです。

 

  • 高身長
  • やせ型
  • 若い男性

 
このような体型の方は、気胸を繰り返す可能性があります。
 
まれに症状を全く感じず、レントゲン検査で偶然見つかることもあります。
 
漏れた空気が胸腔の中にたまり続けると肺がさらにしぼみ、心臓を圧迫して血圧が下がり、心肺停止状態となることがあります。これは「緊張性気胸」といって命にかかわる重大な状態ですので、いち早く医療機関を受診することが大切です。

 
気胸を起こす原因は、以下の5つがあります。
 
①特発性(とくはつせい)自然気胸
呼吸器系の病気を持っておらず、突然気胸となってしまった場合は特発性自然気胸と呼びます。これは、肺に風船のように膨らんでしまったブラ(のう胞)という脆弱なふくらみができてしまい、これが突然破けてしまうことで気胸になります。先ほど説明した「気胸体型」とされる高身長のやせ形男性に多いです。
※ブラ:肺の一部が風船のように膨らんで破れやすくなっている状態で、肺の先端近くにできやすいです。
 
②続発性自然気胸
特発性自然気胸と異なり、もともと呼吸器系の病気を持っている方に起こった気胸を続発性自然気胸と呼びます。肺気腫、肺結核、じん肺など、肺全体の組織が脆弱になってしまうことで肺が破け、気胸となります。
 
③外傷性気胸
交通事故や高所からの転落によって肋骨を骨折し、折れた骨片が肺に刺さって破けてしまって起こった気胸を、外傷性気胸と呼びます。
 
④医原性気胸
肺の組織を採取する肺生検や、そのほかの医療行為によって起こってしまう気胸を医原性気胸と呼びます。これは病気というより、様々な医療行為の合併症として考えられています。まれではありますが、鍼灸治療の後に気胸を発症してしまうこともあり、そのような場合も医原性気胸に含まれます。
 
⑤月経随伴性気胸
女性にしか起こらない気胸で、月経周期に伴って発症する特殊な気胸を月経随伴性気胸と呼びます。何らかの原因で子宮内膜の組織が肺に生着し(異所性子宮内膜症)、月経周期に伴って出血を起こすことで気胸も発症します。右側の肺に多く、胸腔の中に出血することも多いです。

 
気胸の治療法は、レントゲン検査やCT検査により肺がどの程度つぶれてしまっているかを確認してから決定します。治療法としては、以下の3つがあります。
 
①経過観察
肺があまりつぶれておらず症状も軽い場合には、自宅で経過観察することがあります。定期的にレントゲン検査を行い、自然に気胸が治癒するのを待ちます。症状が進むようであれば、空気を抜くためにチューブを留置したり、手術を行う場合があります。
 
②チューブを留置して脱気
肺が半分以上つぶれてしまっていたり、呼吸困難などの症状がある場合には入院をしてチューブを留置し、脱気を行います。まず、肋骨の間から胸腔の中に人差し指くらいの太さのチューブを入れ、胸の中にたまった空気を抜きます。その後、破れた肺からの漏れが自然に止まるまで自然治癒を待ちます。
1週間程度様子を見ても空気の漏れが止まらない場合は、外科手術で原因となっている肺を切除するか、胸膜癒着療法といって薬剤で破れた肺を癒着させて肺から漏れる空気を止める方法があります。
 
③外科手術
チューブを留置して脱気をしても漏れが改善しない場合、外科手術で原因となっている肺を切除します。特発性自然気胸であれば原因となっているブラを切除すればよいですが、続発性自然気胸の場合は、もともと肺そのものの状態が良くないため、手術をしても空気の漏れが収まらないことがあります。そのような場合には、手術と同時に胸膜癒着療法を行うこともあります。

 
特発性自然気胸は、なぜブラが突然やぶけてしまうのか、その原因ははっきりとわかっていません。そのため明確な予防法はありませんが、肺に負担を与えるような行動、例えば喫煙は控えたほうが良いとされています。また、若い方の再発率は高いとされていますので、複数回気胸の治療をしたことがある方は、外科手術などの根本的治療を検討されてはいかがでしょうか。
 
診断にはレントゲンやCT検査が必要ですので、もし気胸を疑う症状を自覚された場合には、そのような設備が完備されており、呼吸器外科医の在籍する医療機関を受診することをお薦めします。