代表的な症状

脂肪肝

 

 
脂肪肝といえば、どのようなイメージがありますか?
きっと、体格の良い大酒飲みの方がなる病気と思われたのではないでしょうか。

アルコール性脂肪肝は、その名の通りアルコールの過飲が原因で発症します。
日本酒5合以上を毎日飲むと1週間で、日本酒3合以上を5年以上飲むと脂肪肝になっている人が多いとされています。

肝臓という臓器は複雑な機能を持っており、アルコールに対しては分解・解毒といった働きをしています。
さらに、アルコールを飲みすぎると中性脂肪やコレステロールが肝臓に蓄積し、アルコール性脂肪肝を発症します。

アルコール性脂肪肝になっても、初期のころは自覚症状がほとんどなく、採血で少し肝機能異常を指摘される程度で済んでしまいます。
健康診断の結果を見て、心持ち飲酒量を減らした経験はありませんか?
飲酒量を減らすことがアルコール性脂肪肝の絶対的な治療法なので、知らず知らずのうちに治ってしまっていることもあります。

 
アルコール性脂肪肝の初期は特有の自覚症状がないため、発症初期は全く気づきません。
健康診断の採血検査で肝機能異常を指摘され、初めてわかります。
採血検査の項目の中でも、トランスアミナーゼ(AST、ALT)の値に注目してください。
よくお酒を飲む方は、「γーGPT」という数値にも注意してください。

採血で脂肪肝が疑われたら、次は腹部超音波検査を行います。
脂肪肝の場合は腹部超音波検査で特徴的な検査所見が出ますので、生活歴などと併せて診断します。

 
脂肪肝は、アルコール過剰摂取や食習慣などから、肝臓の組織に中性脂肪やコレステロールが沈着することで発症します。
そして、その脂肪肝に何らかのストレスが肝臓にかかることによって、肝臓に炎症を起こしてしまいます(脂肪性肝炎といいます)。

「脂肪肝=アルコール性脂肪肝」と考えられていますが、近年ではアルコールを全く飲まない比較的やせ形の方も脂肪肝になっていることが知られるようになり、「非アルコール性脂肪肝(NAFLD:ナッフルディーと読みます)」という病気として再認識されました。

この脂肪肝はアルコール性脂肪肝より危険性が高く注意が必要です。

日本では総人口の29.7%の方がこのNAFLDに罹患していると言われ、男性は40~59歳を中心とした中年層に、女性は閉経後の60~69歳に多く発症しています。
近年、若年者にもこのNAFLDが見られ始めており、それぞれの年代のライフスタイルが関与していると考えられています。

NAFLDを引き起こす一番の原因はもちろん肥満です。食事内容では、

 

  • カロリーの過剰摂取
  • 糖質(炭水化物)過多
  • ソフトドリンク(糖質、果糖)
  • 肉類
  • 脂質の過剰摂取

がNAFLDを引き起こす原因とされています。
しかし、ダイエット目的で朝食抜きの食生活を行っている若年者も、NAFLDとなる可能性が非常に高いと言われています。

 
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、肝臓の病気で体に何らかの異変を起こし始めた時にはもう手遅れとなっている場合が多い臓器の一つです。
この脂肪肝も同様で、知らない間にゆっくりと進み、気付いたら肝硬変となってしまいます。

肝硬変は肝臓がんの前段階とも言われているため、肝硬変となってしまう前に対策を立てる必要があります。
ファイブロスキャンと呼ばれる、腹部超音波検査で肝臓の硬さ(肝硬変になっていないか)を調べる方法も確立されています。

 
脂肪肝は特殊な場合を除き、治療により元に戻る可能性があります。

治療の原則は、原因の排除と原因疾患の治療です。
肥満に伴う脂肪肝は食餌療法と運動療法が基本となります。

アルコール性脂肪肝の場合は、禁酒が絶対です。
食事をせずお酒だけ飲む方も多いと思いますが、必ずバランスの取れた食事と一緒に飲酒をしてください。
もしアルコール依存がある場合は、禁酒を含めた治療を受けましょう。

その一方で、NAFLDの場合は特効薬と言われるものは存在せず、食事と運動療法による体重コントロールを地道に行うことしか手段がありません。
非肥満者のNAFLDでも内臓肥満の方が多く、体重の7%を減量してようやくNAFLDが治癒するという報告があります。
様々な薬物療法も試されてはいますが、特効薬のようなものはまだ見つけられていません。

 
近年アルコール消費量が減っていることもあり、これから先、NAFLDと診断される方は増加すると見込まれています。
これまで説明してきた通り、NAFLDに必ず良いと言われる治療法は現在ありません。
バランスの良い食生活や運動など今のうちから健康管理に気を付け、脂肪肝(特にNAFLD)にならないよう、予防医療に努めましょう。