代表的な症状

気管支炎

 

 
私たちが鼻や口から吸った空気は、気管、気管支、細気管支を順番に通り肺へとたどり着きます。その中でも気管支で炎症を起こし、咳や発熱、痰がらみなどの症状を引き起こす状態を気管支炎といいます。
 
私たちは普段、「風邪をひいた」「咳がでる」「痰が絡む」など、実は頻繁に気管支炎を起こしています。気管支炎には、数日から数週間程度で治る「急性気管支炎」や何か月も症状が続いてしまう「慢性気管支炎」に分けられますが、ここでは私たちがよく起こしてしまう「急性気管支炎」の説明をします。

 
気管支炎の症状は、主に以下の3つになります。
 

  • 咳、痰の増加
  • 呼吸困難
  • 発熱

 
気管支炎の典型的な症状に咳がありますが、通常咳は10~20日程度続いて自然に改善することがほとんどです。しかし、もともと喘息の既往がある方などは4週間以上咳が持続することがあり、症状が続くために医療機関を受診する人も多くいます。
 
慢性閉塞性肺疾患(COPD:肺気腫)など、もともと肺の病気を患っている方が気管支炎になると、COPDの急性増悪と言って、細菌感染症の併発や呼吸苦が強くなり入院が必要となる場合もあります。
 
発熱に関しては通常3~5日程度続くことが多いですが、こちらも通常は自然に改善します。最近では、気管支炎による発熱は無理に下げない方が早く治癒するとする研究結果もあり、やはり自然免疫による体調管理が重要とされています。

 
気管支炎は、多種多様のウイルスや細菌などの病原体によって引き起こされることがほとんどです。気管支炎を起こすウイルスではインフルエンザウイルスや最近話題のコロナウイルスなどが有名です。これらのウイルスは気管支の細胞に感染し、それを自分自身の免疫細胞が攻撃し始めることで炎症を引き起こします。その結果、気管支炎が引き起こされます。
 
一方、ウイルス以外で有名なものは、百日咳菌やマイコプラズマがあります。これらも同様に気管支の細胞に感染することで、自分自身の免疫細胞に攻撃されます。これら以外にも気管支炎を引き起こすウイルスや菌はたくさんありますが、百日咳菌やマイコプラズマは特別な抗菌薬治療が必要なため、そのような原因菌しか特定することはありません。

 
気管支炎は通常は自然に治癒するのであまり心配いりませんが、もともと気管支喘息やCOPDなど呼吸器系の基礎疾患を持っている場合には、喘息発作を起こしたり、重症の肺炎へと進んでしまう場合があるため注意が必要です。 

 
気管支炎の治療は咳止めや解熱剤といった症状を和らげる治療、すなわち対症療法を行うのが一般的です。よく「かぜ薬」や「抗生物質」の処方を希望される方もいますが、「かぜ薬」というものはそもそも存在しませんし、特にウイルス性気管支炎が疑われる場合は、抗生剤は無効であるため使用することはありません。
 
市販の総合感冒薬と呼ばれるものはカフェインが含まれているため、飲めば一見効果があって元気になったように思えますが、必ず必要な薬ではありません。
 
例外としては、インフルエンザウイルスによる気管支炎の場合には様々な抗インフルエンザ薬を使用することもありますし、気管支喘息やCOPDを基礎疾患にお持ちの方で症状が悪化してしまった場合には、喘息であれば気管支拡張薬や酸素吸入を、COPDの急性増悪では重症肺炎の予防を考慮し、抗菌薬を使用することもあります。
 
このように、ほとんどの場合で気管支炎には薬物治療を行うことなく、ご自身の免疫力で自然に改善することを待つ場合がほとんどです。免疫力を高く保つには規則正しい日常生活を送ることが大切ですので、よく風邪をひきやすい方は今一度ご自身の生活を見直してみましょう。

 
気管支炎は誰しもが一度はかかったことのある病気だと思います。治療は対症療法しかありませんが、一番大事なのはみなさんの免疫力です。規則正しい生活や食習慣を心掛け、免疫力を落とさないよう心掛けてください。また、発熱などの症状がつらい場合には症状を和らげる対症療法を受けるため、かかりつけのクリニックを受診することをお薦めします。